待合室

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恋人に恋文を送るのに歩く二駅なんて何の足しにもならない。

恋人に心を伝えるための一夏なんて、目の前で過ぎ去ってどんどん小さくなって行く古い電車のよう。

決意のできぬ人に時なんて価値のないものと、私は思うのです。

決めれぬままでは電車が遠くへ行ったことすら気付かない。

意を決した彼だけが、小さくなった電車を見送ります。彼だけが秋風を感じることができます。

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丸々とした艶やかな菓子を食べるには、立夏でも夏の果てでもいけないような気がします。ちゃぶ台の上のコップがかいた汗。海の上の赤紫色の空。背の揃うことの無い本達。夏のてっぺんに見る艶やかさを、重い雪の積もる頃にふと思い出す。暗い世界の中、それは喉から手が出るほど恋しく